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在ニューヨークの金融マンが語る、(下らない)日常と雑感。そこには勝利も栄光もなく、ただ日常があるだけです。

航空機ファイナンスと航空機リースの違い

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この2つ、似ていて非なるものです。僕も昔は違いがよく分かっていませんでしたし、今でもヘッドハンターの方から案件を持ち込まれる時に、彼らもまぁほぼ100%混同していてよく分かっていません。笑

 

なので全国のヘッドハンターの皆様(と金融業界の皆様)、ぜひこの機会に勉強をお願いします。笑

 

航空機ファイナンスとは、「ファイナンス=融資(金貸し)」です。なので主体となるのは主に銀行です。航空機ファイナンスとは言葉を変えれば「航空機担保付き融資」です。金を貸す代わりに航空機を担保にとるビジネスです。

 

一方、航空機リースとは、「自社で航空機を購入」し「お客さんである航空会社へ貸し出す(=リースする)」業務です。ですので主体となるのはリース会社です。機体を航空会社へリースし、その対価としてリース料を受けとります。この際の契約にオペレーティングリースとファイナンスリースという契約方式があるだとか、また「自社で航空機を購入」の方法も、①中古機を買ってくる、②メーカー(業界ではマニュファクチャラーと呼ばれていて、ボーイング社とかエアバス社の事です)から新造機を買ってくる、③航空会社がマニュファクチャラーから購入する飛行機の代金を、リース会社が肩代わりする代わりに所有権を譲ってもらい、同時にリース会社から航空会社へのリースを開始するというセールスアンドリースバック(SLB)という方法があるのですが、これを語りだすと話があまりに長くなるのでまたの機会にします。

 

 

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SLBがファイナンスではないのか?と言われるとちょっと頭を抱えてしまいますが、基本はあくまで、

航空機ファイナンス:銀行(等)で融資←機体は持たない

航空機リース:リース会社でリースする→機体を所有し、それをリースする

なのです。

ちなみに、リース会社は航空会社へ機体をリースしている期間は、機体の整備などは全部その航空会社が受け持ってくれる契約となっているため一見何もしなくて良いように見えますが、これはトンデモない誤解です。何年後かに返還されてくる機体をまた転リースしなくてはいけないので、最初のリースでどれくらい丁寧に使ってもらえるかが大きなポイントになるのです。そこで整備レポートを毎回入手して、どういう整備を施したのかかなり詳細にわたってトラッキングしたりします。ちょっと脱線したのでこの辺りのことはまたいつか書いてみたいと思います。

 

銀行が飛行機を所有してリースはしないのかと言われれば、これは銀行の免許ではリース業は出来ないので、どうしてもやりたければ子会社にリース子会社を作ってそこでやります。メガバンクはそういう事をやっています。それ以外だと、日本では商社の一部門が「航空機リース部門」を持っていますね。

 

じゃあ航空会社が銀行から金を借りられるんだったら、リース会社って存在価値ないよね?というそこの貴方、そうではないのです。

ナショナルフラッグのように歴史も信用もあり、キャッシュもたんまり持っている会社でしたら、1機50~300億円する航空機の「頭金」を払うのはそう難しくはありません。

そう、当然銀行ですので担保価値に対して100%の掛け目で貸してくれる訳ではなく、例えば50億円の機体なら45億円とかしか貸してくれません。残額の5億円は手金から出さなくてはならないのです。それが10機あれば50億円です。これは昨日今日出来たような航空会社やLCCにとっては結構な金額なのです。

そこでリース会社の登場です。リース会社なら50億円の航空機を50億円で(場合によっては51億円とかで^^)買い取ってくれます。それを6年(とか12年)契約でリースという契約にすれば、その航空会社は手金を使う事なくその機体を6年間使う事が出来ます。また、6年後にはその機体をリース会社が引き取っていってくれるので、航空会社はまた新しい飛行機を調達できる訳です。

勿論、航空会社はリース会社にリース料だけを払えばいいのではなく、6年なりの機体返還のタイミングでかかる重整備(6Yチェックなどと言われるもの)の整備積立金も払わなくてはいけない契約になっているので、これとリース料を厳密に足し合わせていけば金利分も手数料分もコミコミなので割高ではありますが、中小の資金繰りに余裕のない航空会社がDay1で無いキャッシュを使って航空機を購入することは出来ないのでSLBを使うことは良くありますし、財務体質の弱い会社だけではなく大手の航空会社でさえこの手法を活用します。だってキャッシュが必要ないんですからね。

 

また、この方法でオペレーティングリース契約とすると「バランスシート(貸借対照表

)にその航空機を載せなくても良い」という会計の裏技があったためにオペリーがもてはやされた時期もありましたが、直近では会計基準もどんどん厳しくなってきてこれだけを理由にオペリーを選ぶエアラインはかなり減ってきたと思います。あくまで資金繰りの問題です。

 

結構、複雑な話になってきましたね。折角なのでもう少し行ってみましょう。(次回へ続く)